コアコンテンツの要約
サロモン(Salomon)はもともと雪山装備を専門とするブランドでしたが、アンタ(Anta)がその親会社であるアメル・スポーツ(Amer Sports)を買収した後、商品カテゴリの重心を調整し(スキーから靴や服などの「ソフトグッズ」へとシフト)、都市部での消費シナリオを拡大し、チャネル戦略を最適化することで、「雪山ブランド」から「モダンマウンテンスポーツブランド」へと変貌を遂げました。これにより、アメル・グループにおいては創業ブランドのシューズ(始祖鳥)に次ぐ第二の成長エンジンとなっています。現在、中国市場では急速に店舗を拡大しており、アメリカ市場ではホカ(Hoka)を目標に出発しました。専門性を保ちつつ、世界的な主流スポーツブランドになることを目指しています。
1. サロモンの変革:「雪山専用」から「都市でも着られる」へ
以前サロモンと言えば、スキーボードや登山靴などのハードコアな雪山装備が思い浮かびますが、現在ではその売り場の60%がオフロードランニングやハイキング用の機能性衣類で、40%がスポーツファッションアイテム(例えばXT-6シューズ)です。しかし、専門性を放棄したわけではありません。依然としてオフロードレースのスポンサーも務めており(例えばコートニー・ダウォルターがサロモンの靴でハードロック100で4回優勝)、冬用装備も継続しています。変わったのは商品の重心であり、靴や服などの「ソフトグッズ」が脇役から主力になり、都市部の店舗でも販売されるようになりました。例えばニューヨークの5番街にある新店では、プロフェッショナルモデルとファッションモデルを一緒に展示し、ランニングマシンの試着コーナーやニューヨークマラソンのルート壁も設置しており、「このブランドは登山だけでなく、普段の服装にも合う」と都市住民に感じてもらいたいと考えています。
2. グループレベル:サロモンが新たな成長エンジンとして、シューズとの役割分担
アメル・グループの第2四半期報告によると、サロモンのソフトグッズ、シューズの全チャネルでの販売、ウィルソン(Wilson)のテニス事業がそれぞれ20%以上の成長を遂げました。これはサロモンがもはやシューズの「従属ブランド」ではなく、グループの中核的な成長要因であることを示しています。
両ブランドの役割分担は明確です。シューズは高級でハードコアな路線を歩み、店舗は洗練された体験を提供し、顧客単価も高いです。一方サロモンは「大衆向けのプロフェッショナル製品+日常着用可能な商品」を提供し、より多くの店舗を展開しています(例えば通勤や買い物にも適したアイテム)。両ブランドは中国のアウトドア市場とライフスタイルの向上から利益を得ており、ハードコアな製品を求める人はシューズを、日常的に使いたい人はサロモンを選んでいます。
3. チャネル戦略:中国では「迅速な店舗展開」、アメリカでは「質重視」
サロモンは市場ごとに異なる戦略を取っています。
- 中国市場:2023年末時点で30店舗だったが、2026年第2四半期末には315店舗に増加し、年間でさらに45店舗を開設する予定です。長期的な目標は400~500店舗です。店舗の規模も大きくなり、坪効率も高いです。また、中国市場向けに地元での研究開発も行っており(例えばアジア人の体型に合わせた服など)、特にスポーツファッションアイテムが若い女性から好評を得ています。
- アメリカ市場:世界最大のスポーツシューズ市場であるアメリカでは、サロモンはまだ「小規模なビジネス」です。ニューヨークやロサンゼルスなどの主要都市で高い注目を集めるフラッグシップ店舗を開設した後、ノードストローム(Nordstrom)やフットロッカー(Foot Locker)などの卸売チャネルにも徐々に進出しています。ただし「量を増やす」のではなく、選ばれた場所での展開を重視しています。まずはアメリカ人が容易に製品を手に入れられるようにし、その後リピーターを育成することを目指しています。
4. 競争圧力:ホカ(Hoka)との対抗
アメリカ市場での最大の競合相手はホカです。ホカもオフロードランニングからスタートし、現在では年収25億9000万ドルを上回る大手ブランドとなっており、サロモン(2025年の売上は約20億ドル)にとって強力な競争相手です。ホカは「マウンテンスポーツブランドが主流ビジネスになり得ることを証明しましたが、サロモンは単なるファッションブランドになることを望んでいません。
サロモンのクリエイティブディレクターによれば、「モダンマウンテンスポーツブランド」を目指しており、技術的な特徴(例えばオフロードランニング向けのグリップ力や防水性)を保ちつつ、都市住民にも魅力的に見えるようにすることが重要だとしています。例えばGRVLシリーズは、専門的な性能でアメリカ市場を開拓し、ホカや他のファッションブランドとの差別化を図っています。
5. 変革の背景:アンタの「ブランド直轄」モデルが鍵
2019年にアンタがアメル・スポーツを買収して以来、「brand-direct」という戦略を推進しています。これは各ブランドが自ら戦略や価値チェーンを管理することを意味し、リソースはシューズ、サロモン、ウィルソンの3つの核心ブランドに集中しています。サロモンにとってこれは以下の変化をもたらしました:
- 商品カテゴリの調整:ソフトグッズの割合が2022年の54%から2025年には71%に増加。
- チャネル戦略の変更:卸売中心(2023年では80%)からDTC(Direct to Consumer)直販へとシフト(現在は55%)。
- 管理層の強化:製品やソフトグッズに精通したCEOを迎え、MM6のデザイナーをクリエイティブディレクターに任命し、ブランドイメージの統一を図っています。
要するに、アンタは単にブランドを買収しただけでなく、資本や小売力、時間を活用してサロモンを「ニッチな専門ブランド」から「世界的な主流ブランド」へと成長させています。
総括
サロモンの変革は「プロフェッショナル性+大衆向け」の試みです。雪山装備の技術的な基盤を失うことなく、都市部の人々にも受け入れられるブランドになることを目指しています。中国市場ではすでに成功を収めており、アメリカ市場ではまだ始まったばかりですが、次のホカになれるかどうかは、雪山装備だけを販売するニッチブランドとしての位置づけを保ちつつ、「モダンマウンテンスポーツ」という独自性を維持できるかが鍵です。これはアメル・グループにとって、「新たな成長エンジンを創出する」上で重要なステップです。