虎嗅

**日本語訳:** 「自動運転からの脱却――資金と人材が『具身化されたインテリジェンス』(Embodied Intelligence)へと流れている」

原文:逃离智驾,钱和人涌向具身智能

2026年中国の自動運転業界の現状と課題

2026年の中国の自動運転業界は表面上は華やかに見える(L2レベルの普及率は70%を超え、L3レベルの技術も実際に道路で使用され始めている)。しかし、その背後には「商業的な収益の低迷、技術革新の停滞、データの不足」という3つの深刻な問題が隠されている。これらの問題により、多くの高度な人材や資本が自動運転分野から「具身知能(アバターロボット)」分野へと移動しており、新興産業が「急速な拡大」から「深い調整」へと移行するというサイクルが見て取れる。

1. 商業的な困難

自動運転の研究開発は「埋められない穴」のようなものだ。問題はコストと収益の大きなミスマッチにある:

  • コスト面:研究開発には多額の費用がかかる。年収数百万円の博士を雇い、時間単位で料金を請求する高価なコンピューティングリソースを使用し、車が売れた後もソフトウェアのアップデートに継続的に投資が必要だ(既存のユーザーは追加で料金を支払わない)。
  • 収益面:ユーザーは自動運転用のソフトウェアに対して支払いを渋る。数千円から数万円の料金がかかるサービスに対して、「必要ない」と感じる人が多く、営業担当者も「支払い習慣が定着していない」と不満を抱いている。

量産が始まると、アルゴリズムチームは「イノベーションの中心」から「コストの中心」へと変わってしまう。以前は新しい技術を開発することに力を入れていたが、今では高度な人材が毎日同じような作業(コードのメンテナンスやデータの処理)に追われている。だからこそ、「もはやイノベーションが進まない」という声が上がるのだ。

2. 技術革新の停滞

国内の自動運転技術は「量産のスピード」では優れているが、核心的な技術の突破が遅れている:

  • ユーザーの行動パターンの学習:テスラのFSDはユーザーの駐車習慣を学ぶことができるが、国内の多くのシステムはこれに追いついていない。それは技術的に不可能なわけではなく、設計段階で考慮が欠けていたからだ。
  • 環境予測の精度:テスラは実際のデータを基に仮想の極端な状況(豪雨や凹凸のある道路)を生成できるが、国内ではまだ3Dガウスモデルを使用しており、テスラの「世界シミュレーター」との差が明らかだ。

量産が始まると、企業はコスト削減のために既存のコードにパッチを当てはめるだけで、根本的な技術革新に取り組む意欲がない。これが技術の進歩を妨げている。

3. データの問題

自動運転の鍵となるのは「アルゴリズムとデータ」だが、高品質なデータが不足している:

  • 極端な状況のデータが不足している:通常の道路データは豊富だが、豪雨や雪、特殊な車両などの極端な状況は頻度が低く、何十万キロメートル走っても遭遇することはほとんどない。たくさんのデータを集めても意味がない。
  • データ処理の効率が低い:収集されたデータのうち実際にトレーニングに使用できるのはわずか5%に過ぎない。データの処理には多くの手間とコストがかかる。
  • データチームの地位が低い:業界では「アルゴリズムこそが核心」とされており、データ処理の仕事は「単純な作業」と見なされがちだ。データチームの意見はあまり重視されていない。

4. 人材の流れ

自動運転分野から人材が流出するのは偶然ではなく、産業の焦点の移り変わりによるものだ:

  • 資本の動向:2025年から2026年にかけて具身知能分野への投資が急増し(2026年上半期には935億元を超えた)。宇树科技(ユーシューテクノロジー)の上場時の市場価値は一時的に4000億元を超えた。市場は「次の成長分野」に資本を投じている。
  • 人材の需要:具身知能に必要なAIアルゴリズムやデータ処理のスキルは自動運転分野の人材と重なっている。陳茉新(チェン・モーチン)の会社では、従業員の半分が自動運転分野から来ており、基礎的なデータ処理の仕事も具身知能分野に移っている。
  • 業界の期待:自動運転は「商業的な検証段階」に入っているが、具身知能はまだ「技術的な探索段階」にある。人材は「ロボット分野にはまだ10年以上の成長余地がある」と考えている。

5. 基礎的なデータ処理作業の苦労

自動運転分野のプレッシャーは産業チェーンの最も下流にも伝わっている:

  • データの基準が厳しい:動きの軌跡は滑らかでなければならず、歩行者の位置情報は特定のサイズの正方形でなければならない。品質検査を通過するために、データ処理作業者は細かい判断の余地を失っている。
  • ツールの不備:データ処理用のツールにはバグが多く、操作がしにくい。フレームの切り替え時に前のデータが残ったり、センサーの死角を補うために感覚に頼らなければならないこともある。
  • AIの補助が役立たない:AIによる事前のデータ処理も遅いか、誤りが多い。実際には手作業の方が効率的だと感じる人もいる。

まとめ

自動運転業界は「成長期」から「調整期」に入っており、具身知能が新たな注目分野となっている。しかし、すべての新興産業は「研究室→量産→商業的な検証」という道のりを経なければならない。具身知能も将来同じような困難に直面する可能性がある。資本の力による一時的な成功が過ぎ去った後、本当の試練が始まるのだ。