核心内容の要約
トランプ大統領は「美的嗜好」を理由に、アメリカ海軍に対してフォード級航空母艦に2つの大規模な技術的変更を要求した。1つ目は、より先進的な電磁式ジェット推進システムを廃止し、古式の蒸気式ジェット推進システムに戻すこと。2つ目は、現在後方に位置している艦島を船体の中央に移動させることで、「第二次世界大戦時の航空母艦に似ている」という理由だ。この決定は軍事専門家やメディアから広く批判されており、専門的な設計論理に反し、コストの増加や工期の遅延、さらには航空母艦の戦闘力の低下を招くとされている。これは権力が専門的な意思決定に不当に介入する典型的な例である。
トランプ大統領の「美的改造」:航空母艦を「レトロ」にする独断的な要求
トランプの要求はいずれも「外観」を中心にしている:
- 電磁式ジェット推進システムから蒸気式への変更:電磁式ジェット推進システムはフォード級の核心的な技術的優位性であり(蒸気式よりも高速で省エネでメンテナンスが容易で、航空機の出動効率を向上させる)、しかしトランプは蒸気式の方が「信頼性が高い」と考えている(実際には技術的な詳細を理解していない)。
- 艦島の位置変更:現在のフォード級の艦島の位置は専門的な設計の結果だが、トランプは第二次世界大戦時の航空母艦の艦島の方が「見た目が良い」として変更を要求している。
彼はさらに「私は美的感覚を重視する人間だ」と公言し、軍事装備の設計基準を「戦闘力優先」から「自分が見た目に合うかどうか」に変えてしまった。
艦島の位置変更の理由:航空機の出動効率を高めるため
艦島の位置は航空母艦設計の重要な要素であり、フォード級の艦島を後方に配置することは専門チームが何度も検証した結果だ:
元フォード号の艦長(現海軍少将)によると、航空母艦の核心的な戦闘力は「単位時間あたりにどれだけ多くの航空機を出動させるか」である。航空機は着陸後、「燃料補給→爆弾の装着→再び離陸」というプロセスを経るが、艦島を後方に配置することで、頻繁に離着陸する戦闘機が艦島の前方に停まり、燃料補給や爆弾装着のエリアが離着陸滑走路を塞ぐのを避けることができる。艦島を後方に配置すると船首の視界に盲点が生じるが、遠隔ビデオシステムで補うことができる。
簡単に言えば、艦島を後方に配置することで航空機の出動効率が向上し、戦闘力が強化される。中央に移動させると逆に効率が低下する。
変更のコスト:トランプの「美的改造」が実現するまでには10年以上かかり、費用も無駄に
これらの変更は単なる口先だけのものではなく、巨大なコストと時間がかかる:
- 蒸気式ジェット推進システムの変更:現在建造中のミラー号(CVN-81)に影響を及ぼす可能性があり、設計のやり直しや契約の変更が必要で、追加費用が発生する。
- 艦島の移動:次に建造されるCVN-82(クリントン号)からのみ実施可能で、それ以前の艦はすでに設計が確定している。契約を結んだとしても建造には数年かかり、新しい航空母艦が完成するのは少なくとも10年後だ。その時にはトランプは90歳を超えており、実際に完成を見ることができるかどうかも疑問だ。
これらの変更は納税者の税金を無駄にし、海軍の装備更新の進行を遅らせる。
権力の越権:大統領の「趣味」が専門的な軍事決定を妨げる
軍事専門家はこれを「政治的な工程」であり、軍の実際のニーズではないと考えている:
- 美観は低優先事項:軍艦の最優先事項は戦争に勝つことであり、「美の選抜」ではない。トランプはアマチュアの建築愛好家として、専門的な設計を自分の美的感覚で置き換えている。
- 過去の介入の悪影響:トランプは「トランプ級戦列艦」の推進を行い、海軍の次世代駆逐艦DDG(X)計画を中止し、PPTだけのプロジェクトに170億ドルを浪費した。また、以前の沿岸戦闘艦プロジェクトも失敗に終わり、設計が不合理で能力が不足していたため10年で退役した。
今回の航空母艦設計への介入も、専門家の意思決定の余地をさらに狭めることになる。もし航空母艦の艦島の配置まで大統領が決定するならば、次世代の戦闘機や核潜水艦の設計も同様に大統領の承認が必要になるのだろうか?このような状況が続けば、海軍の装備更新はさらに混乱するだろう。
リーダーの細かい介入のリスク:地位が高いほど、発言には慎重であるべき
トランプの問題は「細かいことまで口出しする」ことにある:
リーダーの発言には「権力」が伴い、地位が高いほど個人の意見と正式な決定の境界が曖昧になる。大統領が技術的な詳細に頻繁に口出しすると、部下は「何事もリーダーの意見を聞く」習慣が身につき、専門家は決定を下すことができなくなる。
アメリカ海軍は現在、艦艇の老朽化に直面しており(初期のバーク級駆逐艦は間もなく退役し、ティコンデロガ級巡洋艦は2029年に全て退役する)、このような専門的な決定がより一層求められている。大統領の「美的嗜好」に振り回されるよりも、専門的な判断が必要だ。このような介入は海軍の装備の問題をさらに悪化させるだけだ。
総括
トランプによる航空母艦の「美的改造」は権力の越権であり、個人の好みを専門的な論理に代えるものだ。これは資源の無駄遣いや工期の遅延だけでなく、アメリカ海軍の戦闘力の低下を招く。これは「素人が専門家の仕事を横取る」リスクを示している。一般の人々にとっても、専門的なことは専門家に任せるべきであり、権力が技術的な決定に無闇に介入すべきではないという教訓を与える。