核心内容のまとめ
雲南省曲靖市で約5,000万円を投じて開発された「都市の脳」アプリ(曲靖通)は、人口550万人の都市においても1日の利用者数がわずか60人にとどまっています。この事例は、中国のソフトウェア業界に潜む問題を露呈しています。多くのToG(政府向け)プロジェクトや一部のToB(企業向け)プロジェクトは、ユーザー価値やビジネス価値を創出するためではなく、政績を上げたり、予算を使い切ったり、KPIを達成するために立ち上げられています。予算が豊富な時はこのような「見せかけのプロジェクト」も通過しますが、予算が厳しくなるとすぐにカットされてしまいます。このようなプロジェクトを長期にわたって手がけているソフトウェア会社は、真の製品開発能力を失い、最終的に市場から淘汰されてしまいます。
一、曲靖通事件:荒唐無稽な数字の背後にある「無関心」
5,000万円を投じても1日の利用者数が60人というのは、曲靖市の人口10万人あたりわずか1人がこのアプリを使っているに過ぎません。これは「誰も使っていない」というよりも、「その存在をほとんど知られていない」ということです。さらに皮肉なことに、プロジェクトの立ち上げから検収までの過程で、「このアプリが市民や企業のどのような問題を解決できるのか」という疑問を持つ人は一人もいませんでした。例えば、市民が社会保障情報を確認したり手続きを行う場合、もっと便利なミニプログラムやオフラインの窓口が既に存在するかもしれません。企業が必要とする政策申請や承認についても、このアプリは全く対応していないかもしれません。これは、単なる「都市の『デジタル化』を示すための飾り」に過ぎず、実際のツールとは言えません。
二、ToG市場の低迷:予算の厳格化は「価値の選別」であり、「悪者」ではない
政府の予算が厳しくなったためにToG事業がうまくいかないと皆が言いますが、実際には予算の厳格化によって「無意味なプロジェクト」が淘汰されているだけです。以前は予算が豊富だったため、政策が「デジタル化」を求め、リーダーが政績を求め、部門に予算があれば、ソフトウェア会社はプロジェクトを引き受けることができました。実際の効果は考慮されず、お互いのニーズに応じていました。しかし今は予算が減少したため、優先順位をつけなければなりません。基層の効率を本当に向上させるプロジェクト(例えばコミュニティのデータ収集の迅速化)や民生を改善するプロジェクト(例えばオンラインでの医療保険手続き)は残されますが、単に「デジタルシステムを持っている」という見せかけのプロジェクトは最初にカットされます。これは、家計が厳しくなった時に無駄な装飾品を捨て、必要なものだけを残すのと同じです。
三、ソフトウェア会社の「致命的な誤解」:注文があるからといって需要があるわけではない
多くのソフトウェア会社は、「顧客がお金を払うということは需要がある」と考えがちですが、実際には顧客が単に予算を使って見せかけを作っているだけの場合があります。例えば、政府機関が「デジタル化の評価」を求めたり、企業が「トレンドに乗る」ためにソフトウェアを購入する場合です。しかし、このようなプロジェクトには2つの問題があります:
1. リピーターや長期的な利益がない:ソフトウェアが顧客に価値を提供しないため、次回予算が厳しくなると契約を更新しません。予算が増えても、顧客は価格だけを考えます(印刷用紙を買うように、安いものを選ぶ)。
2. チームの能力が損なわれる:このようなプロジェクトを長期にわたって手がけると、チームは入札書類の作成や機能の実装に専念し、業界の実際のニーズ(例えば、待ち時間を減らすシステムが必要な病院など)を研究することができなくなります。市場が「ソフトウェアによるビジネス成果が必要」と要求する時、これらの会社の経験は無価値になります。
四、適切な顧客を選ぶことが「AIへの転換」よりも重要
現在、すべてのソフトウェア会社が「AIへの転換」を叫んでいますが、顧客に本当の価値が必要でなければ、AIは単なる「見せかけの新しい外観」に過ぎません。例えば、出勤管理のためだけにソフトウェアを購入する企業は、価格だけを考えます。本当の「適切な顧客」とはどのようなものでしょうか?例えば、チームが毎日頻繁に協力する必要があるテクノロジー企業が協同作業用のSaaSを購入する場合、そのソフトウェアがなければ業務が進まないため、価値のためにお金を払います。しかし、誤った顧客は「予算のために購入」するだけです。例えば、単に出勤管理のために協同ソフトウェアを購入する企業は、予算が多くても最も安いものを選びます。したがって、ソフトウェア会社が転換すべきは「AIの方向」ではなく、「顧客の方向」です。プロジェクトを始める前に、以下の2つの質問をしましょう:「このソフトウェアを使わなければ顧客は何を失うのか?」「予算が半分になってもこのプロジェクトは継続されるのか?」答えが明確でなければ、どんなに大きな注文でも受け入れるべきではありません。
五、AI時代の古い問題:AIが必要ない顧客にAIを提供すること
AIが流行っている今、多くの会社が古いソフトウェアにAI機能を追加して販売していますが、顧客が本当に価値を求めていない場合、AIは単なる「見せかけ」に過ぎません。例えば、誰も使わない都市アプリにAIの推薦機能を追加しても、誰も使いません。出勤管理のためだけにソフトウェアを購入する企業にAIの効率分析機能を追加しても、追加料金を払うことはありません。本質的に、AIはツールに過ぎず、「救いの稲わら」ではありません。ソフトウェア会社が「見せかけのためにお金を払う」顧客に注目し続ける限り、市場から淘汰される運命からは逃れられません。市場が評価するのは「使えるかどうか」であり、「AIがあるかどうか」ではありません。
最後:ソフトウェア業界の「生存法則」
曲靖通の事例は、お金を多く使ったからといって失敗したわけではなく、「最初から間違っていた」からです。誰もユーザーのニーズを考えていませんでした。ソフトウェア会社にとって最大のリスクはAIを使えないことではなく、価値がない顧客を選んでしまうことです。本当に問題を解決できる製品を作り、どんな予算環境でも生き残るためには、「ソフトウェアを使わなければ生きていけない」顧客に焦点を当てる必要があります。結局のところ、ユーザーが「役立つもの」に対してお金を払うことは、「見せかけ」に対してお金を払うよりも長期的に続きます。