2026年上半期の銀行業界の変化:定期預金の増加と利息コストの低下
2026年上半期、上場銀行では「常識に反する」現象が見られました。定期預金の規模は増加しているにもかかわらず(例えば農業銀行の個人定期預金は9422億円増加、工業銀行の個人定期預金は1兆円増加)、預金の平均利息コストは明らかに低下しています。その主な理由は、過去数年間に住民や企業が預けた高利回りの定期預金が次々と満期となり、再預金時に銀行が提供する利息が以前よりも低くなったためです。これにより、全体の平均利息コストが下がっています。しかし、銀行の利益の核心指標である「純利差」(貸出利息から預金利息を差し引いた額)はわずかに上昇したに過ぎません。なぜなら、貸出利息も低下しているからです。今後銀行がコストを継続的に削減できるかどうかは、3つの重要な要素にかかっています:
- 満期となった資金が長期預金に再投資されるか
- 新規の定期預金の利率がさらに下がるか
- 当座預金が増加するか
詳細な解説
1. 定期預金が増えているのに、なぜ利息コストが下がるのか?
一般的には、定期預金が増えれば銀行が支払う利息も増えると考えられがちですが、2026年上半期のデータは逆の傾向でした。
- 規模:農業銀行の個人定期預金残高は14.3兆円で、前年末に比べて9422億円増加しました。工業銀行の個人定期預金の平均残高も13.37兆円で、前年比で1兆円増加しました。企業向けの定期預金も増加しており、工業銀行の企業定期預金は5784億円増加しました。
- コスト:農業銀行の個人定期預金の支払利息率は2.1%から1.67%に、工業銀行は2.04%から1.69%に下がりました。平安銀行の預金の平均支払利息率は38ベースポイント(0.38%)も低下しました。
なぜこのようなことが起きるのか? 定期預金自体が減少したわけではなく、「古い預金」と「新しい預金」の間の利息差が影響しています。以前に預けた高利回りの定期預金(例えば3%以上)が満期となり、再預金時に銀行が提供する利息は約1.6%になるため、新たに預けられる定期預金が増えても全体の平均利息は下がってしまいます。
2. 高利回りの「古い預金」が満期となり、低利回りの「新しい預金」に置き換わる
過去数年間、高い収益を確保するために多くの人が長期定期預金(3年、5年など)を選んでいましたが、これらの預金が銀行にとって「高コストの負担」となっていました。2026年上半期になり、この負担がようやく減少し始めました。
- 工業銀行は利息支出が385億円減少したと発表しており、その主な理由は「顧客の預金の平均支払利息率が30ベースポイント下がった」ためです。
- 農業銀行も利率の影響が利息支出減少の主な原因だと述べています。
簡単に言えば、昨年10万円を3年間の定期預金に預けた場合、利息は3%でしたが、今年満期となり、再預金時には10万円を預けても利息は1.6%になります。預金額は変わらないものの、銀行が支払う利息は3000円から1600円に減少するため、全体の平均コストは自然と下がります。
3. 利差の改善は限定的
銀行の利益の源泉は「利差」(貸出利息から預金利息を差し引いた額)ですが、預金コストが下がっても貸出利息も低下しているため、利差の改善は顕著ではありません。
- 2026年第2四半期の商業銀行の純利差は1.41%で、第1四半期に比べてわずか0.01ポイントしか上昇していません。
- 銀行間で差があります。大手銀行(工業銀行、農業銀行)では利差が改善していますが、株式銀行(招商銀行など)は横ばい、外資銀行はさらに低下しています。
なぜか? 貸出側の圧力がまだ緩和されていないためです。例えば、住宅ローンや企業向け融資の利率が低下しており、銀行が得られる「利差」が縮小しています。預金コストの削減効果は、貸出利息の低下によって相殺されています。
4. 今後のコスト削減の可能性
預金コストの削減効果は永遠に続くわけではありません。将来も維持できるかどうかは、以下の3つの要素にかかっています:
- 満期となった資金が長期預金に再投資されるか:満期となった資金が短期預金(1年以内)に変われば利息はさらに低下し、コストはさらに下がる可能性があります。逆に3年や5年の定期預金に再投資されればコストは上昇する可能性があります。
- 新規の定期預金の利率がさらに下がるか:現在銀行が提供する定期預金の利率はすでに低いですが、市場の金利動向や顧客の受け入れ度によります。
- 当座預金が増加するか:当座預金の利息は非常に低い(例えば工業銀行の個人当座預金は0.05%)ため、銀行にとって最も「コスト効率の高い」資金です。給与の振込や資産運用などのサービスを通じて顧客に当座預金に資金を預けてもらうことができれば、コストを安定させることができます。
例えば、招商銀行の預金コストが低いのは、当座預金の割合が高く、顧客が資産運用や振込などのために当座預金を利用しているからです。
5. 銀行の変革
以前の銀行の戦略は「定期預金を多く集めること」でしたが、現在は変わっています。
- 第一段階:「規模拡大」から「コスト管理」へ:定期預金の量だけでなく、その利率が高いかどうかに注目しています。
- 第二段階:「コスト管理」から「顧客管理」へ:決済サービス(企業の給与振込など)や資産運用(ファンド、金融商品など)を通じて、顧客に当座預金や低利回りの商品に資金を預けてもらい、安定した低コストを実現しています。
将来の銀行の競争力は、定期預金の規模ではなく、預金を集めながら低コストの当座預金をどれだけ確保できるかにかかっています。
まとめ
2026年上半期の銀行業界の変化は、定期預金が減少したわけではなく、高利回りの定期預金が低利回りのものに変わったということです。しかし、より多くの利益を得るためには、貸出利息を安定させることや、顧客に資金を当座預金に預けてもらうことが重要です。一般の人々にとっては、定期預金をする際には現在の利息が以前よりも低いことを考慮し、長期預金にするかどうかをよく検討する必要があります。銀行にとっては、「古い預金の満期によるコスト削減」だけでは不十分で、サービスを通じて顧客の当座預金を維持することが求められます。