虎嗅

《スタートレック》60周年記念の宇宙に関する人文・哲学的考察

原文:《星际迷航》六十周年的宇宙人文哲思

核心内容の迅速な要約

今回、老舗のSF IP 『スタートレック』が60周年を機に世界的に再ブレイクしたのは、単なるファンたちのノスタルジアの表れではない。実際のところ、現在のSF創作や宇宙開発の分野では「技術重視、生存至上、人文軽視」という誤った認識に陥っている。宇宙を「弱肉強食のダークフォレスト」と見なし、宇宙探査の目的を「人類のためのバックアップを作ること」としているが、私たちが星に向かって飛び立った当初の初心を忘れてしまっているのだ。しかし、60年前に誕生した『スタートレック』はまさにこのギャップを埋めてくれた。この作品は初めて大衆文化の中で「宇宙は新たな戦場ではなく、全人類の共通の探求の場である」という考えを提唱し、実際に国際的な宇宙規則の確立にも貢献した。そして今では、急速に発展している中国の宇宙開発にとって、東洋特有の宇宙倫理を構築するための重要な参考となっている。

---

詳細な内容の分析

1. この再ブレイクは単なる古い話題の再燃ではなく、世界中の視聴者が「宇宙に関する競争的な物語」に飽き飽きしているからだ

現在、私たちが目にする主流の宇宙SFはほとんどが同じパターンだ。宇宙には自分より強い文明が存在し、少しの不注意で滅ぼされてしまう。人類は地球で生きていけなくなり、必死に外へ逃げ出す。すべての宇宙探査の究極の目的は「生き残ること」だ。『三体』のダークフォレストや『流浪地球』のような物語をたくさん見ていると、人々は宇宙に対して不安しか感じなくなる。星を見上げるとロマンチックだとは思わず、むしろ敵に襲われる危険を感じるのだ。

さらに皮肉なことに、現実の宇宙開発も同様の競争的な道を歩んでいる。月の資源を奪い合い、火星基地を建設し、誰が先に人間を火星に送り込むかを競っている。宇宙は再び冷戦時代の「大国間の競争の場」に戻りつつある。このような状況の中で、60年前の『スタートレック』を見ると、いつもの企業間の駆け引きのドラマとは違い、みんなで協力して物事を成し遂げ、新たな境界を探求する物語に新鮮さと満足感を覚える。つまり、私たちは「そんなに多くのお金を使ってロケットを作り、宇宙開発を行うのは、結局別の星で土地を奪うためなのか?」という疑問を持ち始めているのだ。

2. 60年前の「反常識的な」SFは、創作者の特別な経験から生まれた

『スタートレック』が誕生した1966年は、アメリカとソ連の宇宙開発競争が最も激しかった時期だった。当時のSF作品はすべて宇宙戦争や異星人の侵略を描いており、宇宙開発に携わる人々も宇宙を新たな植民地と見なしていた。しかし、『スタートレック』の創作者であるジェレミー・R・ローデンベリーは「外部の人間」だった。彼は第二次世界大戦に参加し、戦場で人命が無価値であることを目の当たりにし、その後何年も民間航空機のパイロットとして働き、数万メートルの高さで飛び、さまざまな国の人種差別やイデオロギーの対立を見てきた。彼は人類がどれほど愚かな行動を取るかをよく知っていた。

彼は当時の主流の期待に合った「宇宙の楽しい物語」を書くことを望まず、スピードウェーブエンジンが物理法則に合致しているかどうかさえ気にせず、ただ一つの理念を掲げた。「私たち人類が戦争で多くの苦しみを経験したのだから、ようやく地球を離れる能力を持ったのだ。なぜその悪習を宇宙に持ち込むのか?」と。彼が書いた「最高の指針」は今見ても非常に先進的だ。たとえ自分たちの技術が異星文明よりも万倍優れていたとしても、他人の発展のペースを勝手に邪魔したり、資源を奪ったり、技術的な優位性を利用して宇宙の覇者になったりしてはならないのだ。これは、深い森で原始部族に出会ったときに、スマートフォンを使って彼らの生活を乱したり、山の中の金鉱を盗んだりしてはいけないのと同じだ。

3. これを単なるSFの楽しい物語として見るな。実際には人類の宇宙開発の考え方を変えたのだ

多くの人はSFを単なるエンターテイメントだと考えているが、『スタートレック』は「仮想から現実へ」という文化製品の稀有な例だ。1966年にこのドラマが放送された頃、世界には宇宙規則がなく、どの国が先に月に到達すればその月はその国の私有地とされていた。宇宙の軍事化や資源の奪い合いが当たり前だった。しかし、このドラマを見た何千万ものアメリカ人視聴者は「宇宙は全人類のものだ。なぜある国だけが月を独占できるのか?」と考えるようになり、その民意を背景に1967年に国連は「宇宙空間条約」を採択し、どの国も天体を私有することはできず、宇宙探査の成果は全人類で共有されると明確に規定した。現在、国際宇宙ステーションの共同建設や全球的な天文観測データの無料公開、深宇宙探査の協力など、私たちが当たり前と思っている宇宙協力のルールはすべて『スタートレック』によって築かれたものだ。イーロン・マスクでさえ、SpaceXを立ち上げた究極の目標は『スタートレック』に描かれた宇宙文明の未来を実現することだと公言している。

4. 中国の宇宙開発が急速に進むほど、独自の「宇宙観」が必要だ

近年、中国の宇宙開発の技術的な進歩は誰もが認めている。FASTや巡天望遠鏡の建設、宇宙航行の専門家を育成する学院の設立など、私たちはすでに体系的な深宇宙探査の時代に入っている。しかし、これまでの宇宙に対する認識には欠けていたものがあった。伝統的な星空文化は「嫦娥が月に行く」というロマンチックな詩的なものだったが、接触したSFはほとんどが西洋からの「危機からの生存」の物語だった。私たちはまだ、現代の宇宙時代に適した独自の宇宙倫理を持っていない。

数千年にわたって「和而不同」の精神を大切にしてきた文明として、西洋の「ダークフォレスト」の考え方に従う必要はない。他国が宇宙で資源を奪ったり覇者になったりするのとは異なり、私たちは新しい道を歩むことができる。宇宙に行くのは地球の災害から逃れるためでも、他の文明を圧倒するためでもなく、東洋の共生の理念を持って探求し、対話するためだ。このような価値観の提供は、単に技術的な突破を達成するよりも、中国が真に発言権を持つ宇宙強国になるための最も重要な「ナビゲーション」となるだろう。