核心内容の要約
GDPがわずか1260億円の内モンゴルの小さな都市ウランチャブは、AIの計算能力という波に乗り、華為(ファーウェイ)、アップル、DeepSeekなどの大手企業から合計で5000億円以上の投資を受けています。現在の計算能力の規模は全国の8.7%を占めており、地元では「トークンの都」を築くという目標さえ掲げられています。その競争力の源泉は、インターネットで噂されている「涼しさ」や「北京に近い」といった要素ではなく、モンゴル西部の電力網が残した特別な歴史的機会によるものです。ウランチャブは国内で唯一の30セントという安価な工業用電力を利用できています。しかし、資源型都市が共通に直面する問題も抱えており、巨額の投資の利益の大部分は地元に残らず、AIの下流分野への応用を拡大しなければ、単なる「計算能力の請負業者」に甘んじることになるでしょう。
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ポイント別の平易な解説
1. 大手企業が集まる真の理由:電力の安さが決め手
多くの人は、ウランチャブが「年平均気温4.3℃でサーバーの冷却にエアコンを使わなくてもよく、北京から300キロメートル離れているためデータ転送に遅延がほとんどない」という理由で大手企業を引き付けたと考えていますが、これらは実際にはプラス要素に過ぎません。東北のハルビンの方がさらに寒く、甘粛や青海の自然資源も豊富ですが、なぜ大手企業はそちらに集まらないのでしょうか?
実際の鍵は、国内で唯一の電力網の特別な仕組みにあります。20年前にモンゴル西部の電力網は規模が小さく負債が多かったため、国家電力網によって独立した地方電力網として扱われました。その後、内モンゴルの発電能力は急増しましたが、送電路が不足しており、余剰電力は地元で使い切れずに捨てられていました(業界では「窝電」と呼ばれます)。そのため、電力は30セントで損をして売られており、北京の工業用電力価格の半額です。1万台のサーバーを置く計算センターでは、年間で1億円もの電気代を節約できます。さらに、ウランチャブの再生可能エネルギーの割合は86%を超えており、中国政府が要求するスマートコンピューティングセンターの再生可能エネルギー割合80%以上という基準を満たしているため、大手企業にとっては非常に魅力的な条件です。
2. 5000億円の投資は大きな数字に聞こえますが、地元住民が実際に得られる金額はわずか
5000億円がGDPが1260億円の小さな都市に投じられると、地元住民が一躍裕福になると思われがちですが、現実はそうではありません。
計算能力のインフラ構築は「極めて非包括的な」ビジネスです。以前はビルを建てるとセメント、鉄筋、装飾、仲介などの関連産業が活性化し、多くの人々が雇用されましたが、巨大な計算センターができても正社員は最大で500人程度で、そのほとんどは他地域から派遣された技術者です。地元住民が関連する仕事を見つけるのは難しいです。さらに、投資額の約半分はNVIDIAのチップやTSMCの製造サービス、高級な光モジュールなどの核心部品に使われ、その利益は海外や南部の大手企業に流れてしまいます。残りの20%がサーバーの購入や組み立てに使われ、ウランチャブに残るのは電気代、地代、建設費用などで、数年間の建設期間を通じても地元住民が実際に得られる利益はごくわずかです。
3. 本質的には資源型都市の新たな形に過ぎず、オルドスの道をたどっている
ウランチャブの「計算能力」という要素を「石炭」に置き換えてみると、オルドスやクラマイといった従来の資源型都市と発展の道がほぼ同じであることがわかります。以前は地元の石炭を掘って売っていましたが、今は安価な電力を計算能力に変えて販売しています。つまり、資源を売って利益を得ているのです。オルドスの一人当たりGDPは全国で最も高く、上海を上回っていますが、地元住民の実質的な収入は上海の80%に過ぎません。産業チェーンの高利益部分はすべて他地域にあり、地元では基本的な採掘費しか得られません。ウランチャブも同じパターンで、計算センターの親会社はほとんどが北京、深セン、杭州にあり、利益はすべて本社に送られています。地元住民が得られるのは電気代や地代だけです。
4. 単なる計算能力の請負業者になりたくないなら、AI分野で新たな道を切り開く必要がある
ウランチャブが選んだ道筋は非常に現実的です。自社では手に入らないチップや高級サーバーといった上流の高利益部分には手を出さず、AIの下流分野に注力しています。ウランチャブの計算能力は国内で最も安価なため、AI関連の業界は自然とここに集まるでしょう。例えば、AIを使った短編映画や映像のレンダリングなどです。以前は特殊効果のある映画を作るには数百万円のコストがかかりましたが、ここではそのコストが半分になります。ウランチャブが推進する北疆映像計算力産業園では、将来的には全国のAIコンテンツやアニメーション、短編映画がここで制作される予定です。これはAI時代の「横店」のような存在になるでしょう。また、自動運転車のシミュレーションテストも、以前は9ヶ月かかるデータ収集がここでは11時間で済むようになります。これが実現すれば、ウランチャブは単なるサーバーの保管場所ではなく、AIコンテンツや研究開発の中心地となり、多くの職が生まれ、利益は地元住民の手に残るでしょう。
5. 北部の小都市にとっての教訓:計算能力の波に乗るのは簡単ではない
多くの北部の都市がウランチャブの成功を見て計算センターの建設を計画していますが、そのほとんどは真似ることができません。まず、ウランチャブのような電力価格の優位性が必要です。独立した電力網を持っていて電力を30セントで提供できるか、風力や太陽光発電で余剰電力があるかが必要です。単に「涼しく、大都市に近い」と言っても大手企業を引き付けることはできません。さらに、優遇政策で計算センターを誘致したとしても、下流の産業をどのように引き付けるかを事前に考えなければなりません。数十億円を投じて空の機械室を建てても、大手企業はそれを単なる安価なサーバーの保管場所としてしか使わず、高付加価値のある部分は残らず、結局は借金だけが残るでしょう。