核要内容のまとめ
過去数年間、中国の主要都市にあるオフィスビルは供給過多や金融・インターネット大手企業によるオフィス面積の縮小などの影響で苦境に立たされていました。しかし、ここ1年間でAI(人工知能)および半導体産業の急成長がこの状況を変える「鍵となる要因」となっています。AI企業は高級オフィスビルを大量に賃貸するだけでなく、一棟丸ごと購入するケースも増えており、オフィスビル市場の分化を促しています。AI関連エリアでは需要が急増し、「局地的な過熱」が見られる一方で、その影響は住宅市場にも及んでいます。ただし、AIが本当にオフィスビル市場を活性化できるかどうかについては業界内でも慎重な見方が続いています。
1. AI企業がオフィスビル市場の新たな主役となる:賃貸から購入へ
以前は金融機関やインターネット大手企業がオフィスビルの誘致を主導していましたが、現在では「AI産業エコシステム」や「大規模モデルクラスター」といったキーワードが誘致資料に使われています。AI企業の需要の特徴は、必要な面積が広く、意思決定が迅速であり、建物の基準に対する要求が高いことです。例えば、上海の楊浦区にある「雲際尚浦」プロジェクトでは、字節跳動(ByteDance)傘下の企業が一気に4万平方メートルを賃貸し、新しく完成したこのプロジェクトの稼働率をほぼ満室状態にしました。また、最近上場した智譜AI(Zhipu AI)は北京の中関村にあるダイヤモンドビルを3億6100万元で購入し、百度(Baidu)や腾讯(Tencent)と隣り合わせに本社を構えました。これは単なるオフィス利用だけでなく、不動産の価値向上を通じた資産構造の最適化も目的としています。上海だけでなく、深センの南山科技園や杭州の雲谷(Yungu)にあるAI企業もインキュベーターから高級オフィスビルへと移転しており、需要の増加は明らかです。
2. 市場の分化:AI関連エリアが急成長、従来のエリアは安定
主要都市のオフィスビル全体の供給は過剰ですが、地域によって状況は大きく異なります。
- 伝統的な金融・ビジネスエリア(例:上海の陸家嘴)では需要が安定しており、大きな変動はありません。
- AI/計算力/チップ関連エリア(例:上海の徐匯区浜江西岸デジタルベルトや張江モーリコミュニティ)では「局地的な過熱」が見られます。これらのエリアに共通するのは、政府による政策支援と産業の集積、そして大規模顧客の存在です。例えば張江モーリコミュニティでは、大規模モデル企業向けの特別な政策があり、チップや計算力関連企業が集中しているため、賃貸契約が迅速に成立しています。
3. AIはオフィスビル市場だけでなく住宅市場も活性化
AI産業の拡大は孤立したものではありません。商業不動産から住宅市場へとつながる「伝導チェーン」を形成しています:
1. オフィスビル市場:AI企業の賃貸需要の増加により、一部の都市でオフィスビルの純吸収量(新規賃貸面積-既存賃貸面積)が増加し、深センや杭州の科技園の空室率は30%から20%に低下しました。
2. 住宅市場:AI企業の経営陣や技術者の給与や株式収益が上昇し、住宅の購買力が高まり、一部都市で住宅取引量が回復しています。ウィリアム・ソンドーライズ銀行(UBS)の研究報告によると、この不動産市場の好転は政策によるものではなく、AIによる実際の需要によるものだとされています。2026年第1四半期の工業企業の利益は15.5%増加し、AI関連産業がその主な原動力でした。
4. 慎重派:AIの効果はまだ不確かで、楽観的になりすぎない
AIが需要の増加をもたらしているものの、業界内では冷静な見方もあります:
- 従業員数の少なさ:前回のインターネットブーム時と比べてAI企業の評価額は高いものの、従業員数はそれほど多くありません。例えば、評価額が10億元のAI企業でも従業員数は数百人程度であり、以前のインターネット企業のように数千人規模ではありません。
- 効果の遅れ:多くのAI企業はまだ資金調達や採用段階にあり、実際のオフィス需要が発生するには時間がかかる可能性があります。あるアドバイザーは、「現在は需要の増加が見られるだけで、『超大型賃借人時代』が来たわけではない」と指摘しています。
まとめ
AI産業は低迷するオフィスビル市場に新たな活力をもたらしましたが、その持続可能性はAI企業の収益状況、従業員数の拡大速度、そして産業政策の安定性にかかっています。現時点では「変動要因」とされていますが、「確定事実」ではありません。一般市民が感じられる変化としては、テクノロジー企業が多い地域でオフィスビルの賃料が上昇し、周辺の住宅価格も安定する傾向にあることです。